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話には短すぎる短編故此方に。


03.理由なんていりませんただ好きなんです

図書室の扉が見えてくると、周りに気取られないようさりげなく、けれど素早く視線を巡らせる。
とはいえ、目当ての人は大体私より先に図書室にいるからそれは徒労に終わるのだけれど、私はそれをつまらなく思ったことはない。
どちらにしたって見ているだけなのだから、大した差ではない。

そうして身を滑らすように書架の間の特等席をゲットして、視線の向かう先は只一点。
今日も元気そうでとにかく一安心。
知り合いらしい人と本を挟んで談笑しつつとても楽しそうで、何故か私まで嬉しくなる。

とはいえ只見ているだけではストーカー一歩手前だから手元の本にも時折視線を落として。
その本を借りて読むこともよくあるので、最近私は読書家もどきと化している。



ふと目が合う。
見つめすぎたかな、不安は募るけれど。
笑顔で会釈して、微笑が返って来たこの喜びといったら。
恋をしている時にだけ味わえる、途方も無く甘い幸福な感情。

この幸せをなくしたくない、だから、私はこの距離でちょうどいいんだ。


これ以上を望んでも、叶わないのだから。

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by kyoku0707 | 2006-12-31 15:16 | SS